COLUMN第1回 廃棄物の転売問題の本質は廃棄物処理法の限界性にある!

  • 2016.01.28
  • ユニバース・コラム

第1回 廃棄物の転売問題の本質は廃棄物処理法の限界性にある!

環境関連法令の中でも最も規制の厳しいと言われる廃棄物処理法を揺るがす大きな事件が発生した。今、報道を騒がしている食品廃棄物の転売事件である。製造工場から産業廃棄物として処理委託されていた食品廃棄物が、その産業廃棄物処理業者によって転売されていたのである。処理業者は、処理を委託された食品廃棄物を処分したとして電子マニフェストに虚偽の処分終了報告を行っていた。この転売はパート従業員が本来、一般に出回らない商品がスーパーで売られていることに気付いたことで発覚した。

食品廃棄物の転売事件の全体像

私はこの事件を“廃棄物処理法を揺るがす大きな事件”と表現した。この事件は、廃棄物処理法で定められた委託基準に従って「許可のある処理業者」の「施設を確認」し、「事前に契約」し、「マニフェストを交付」して、「処分終了の報告を確認」しても悪意を持って偽装された不適正処理は防げないという法規制の限界性が明確になった事件なのである。

では、今回の事件においてすべての委託基準に不備が無かったとすると、排出事業者に何らかの過失責任があり得るのだろうか。結論としては、廃棄物処理法の原則から言って間違いなく排出事業者にも責任がある。報道では、転売の発覚からの情報開示、再発防止策の提示までの対応の早さが非常に評価されている。たしかに、今回の対応の早さも、再発防止策の内容についても現実的で評価できるものだと言える。

しかし、廃棄物処理法の大原則は「自社で処理すべし、委託をするなら最後まで責任を持つべし」である。つまり、いくら法の規制を遵守していても委託したものが不適正処理されてしまった場合には、排出事業者の責任も免れないのである。厳しい言い方をすれば、提示された再発防止策で今回のような転売事件を防げたのであれば、排出事業者の責任として最初からそのように対応すべきであったのである。

この転売事件の一番の悪はもちろん悪質な転売を行っていた処理業者である。だが、廃棄物処理法では排出事業者責任が大原則である以上、不適正処理に巻き込まれてしまった時点で排出事業者にも少なからずの過失があるとしか言えない。今回の件も、法的罰則は無いにしても、不法投棄に巻き込まれた排出事業者が原状回復の費用負担等を求められるように、流通してしまった産業廃棄物の回収やそれに伴う賠償、回収したものの再処分などの負担は排出事業者も負担すべきである。

今回は転売事件の概要から、排出事業者責任は法令遵守だけでは果たせないということを確認した。次回はそれを踏まえて、今後の排出事業者責任のあり方はどうあるべきか、また、この事件が廃棄物処理法の規制にどのような影響を与えうるのかについてまとめる。

このコラムの執筆者について

白石 遼/ RYO SHIRAISHI

大阪府出身。大阪府立大学人間社会学部卒。株式会社ユニバース環境コンサルタント。
グループ企業内において、廃棄物処理業の実務を経験した後ユニバースに合流。
廃棄物に関する企業内セミナーや、環境教育セミナーなどをメインに手掛けている。
廃棄物のルールや環境問題などを平易に解説するセミナーで多くの参加者に好評を得ている。