COLUMN第2回 今後求められる排出事業者としてあるべき意識と対応

  • 2016.02.18
  • ユニバース・コラム

第2回 今後求められる排出事業者としてあるべき意識と対応

食品廃棄物の転売問題は、食品廃棄物を排出する企業にとって大きな衝撃であった。しかし、この事件は巻き込まれた排出事業者だけの、あるいは食品業界だけのトラブルではない、ということを今一度明記しておく。転売のリスクは、食品に留まらず、在庫品や型落ちした製品をそのままの状態で処理委託している企業全てが抱えるリスクであり、「悪意ある偽装による不適正処理は見抜けない」という事実は処理委託を行う全て企業のリスクである。環境省は全国の都道府県や政令市へ、食品製造時の廃棄物を扱う産業廃棄物処理業者へ立入り検査を1月29日までに実施する要請を通知している。これを受けて、各地から検査結果の報告が上げられているが、不正が見つかったという結果は出ていない。しかし、この結果によって、検査を受けた業者が必ずしも安心とは言えない。なぜなら、冒頭にも上げたように「悪意ある偽装による不適正処理は見抜けない」からである。これは行政が立入をしても同じである。そもそも愛知県の処理業者もその処分施設以外の無申請の施設を利用していたとの報道もある。今回の全国の立入り検査は現在不正を行っている、あるいは行おうと考えていた業者への抑止力にはなると思われるが、決して検査された処理業者の適正処理を保証するものではないということに注意しなければいけない。では、この事件を受けて、排出事業者はどのようにすれば良いのか。意識と対応という2面から見直す必要がある。まず、意識を見直すというのは、「委託すれば安心」ではなく、「委託することはリスクである」と認識を改めなければいけない。本来、自分で責任を持って処分すべきものを、他者へ委託をするからには、そこに必ず企業リスクが発生する。この意識を持つことではじめて今まで認識できなかった危険を「危険」として捉えることにつながる。

意識の次に見直しを行うのは対応である。委託をすることはリスクであると意識して、今一度自社の廃棄物の管理体制を見直して頂きたい。不適正処理につながらないための方法は大きく、「自社で処理する」か「適正に処理委託する」かの2つである。自社で排出する廃棄物の全量を処理することは現実的ではないため、下図に処理委託をする場合の見届け方の例を上げた。

処理委託をする場合の見届け方

法令部分の対応は大前提である。しかし、今回の事件で法令以上の対応が不可欠であることが明らかになった。これから見直さなければならない対応は、法令以上の見届けと一部を自社処理するという部分である。委託はリスクだという意識のもと、今の管理体制は法令以上にどのような対応をしているだろうか。また、その対応は果たしてリスクを最大限小さくできているだろうか。これらの対応から最も有効な方法を選択、あるいは組み合わせることが必要である。

すべての企業に対して一律して「これをすれば問題ない」という対応はない。ただし、企業ごと、排出する廃棄物ごとに必ずリスクを最大限小さくする方法は存在する。今回の事件に巻き込まれた排出事業者の再発防止策を見た人は、その対策の内容について納得したのではないだろうか。おそらく排出事業者は、もともと社内の廃棄物管理については一律の対応をしていたのだと思われる。それをこの事件を受け、「食品廃棄物」を不適正処理されないように見直すことで、「包材から取り出したり、他の廃棄物と混ぜたりすることで製品そのままの形で廃棄しない」「そのまま廃棄する場合は全量が処分されるまで立ち合う」といった、具体的で多くの人が納得できる有効な対応を立てることができたのである。

廃棄物処理法はさらなる規制強化・罰則強化が進められるのは明らかであるが、法律を守っていれば良いという時代は終わっている。これからは法令遵守ではなく、「委託にはリスクがある」という意識のもと、「不適正処理されないための対応」が求められる。

このコラムの執筆者について

白石 遼/ RYO SHIRAISHI

大阪府出身。大阪府立大学人間社会学部卒。株式会社ユニバース環境コンサルタント。
グループ企業内において、廃棄物処理業の実務を経験した後ユニバースに合流。
廃棄物に関する企業内セミナーや、環境教育セミナーなどをメインに手掛けている。
廃棄物のルールや環境問題などを平易に解説するセミナーで多くの参加者に好評を得ている。